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「小泉八雲とセツが歩いた道」道体験ブログシリーズ~杵築~
物語のはじまり「稲佐の浜」

出雲大社の西方、海へと続く道の先に広がる 稲佐の浜。
ここは、旧暦十月に全国の八百万の神々をお迎えする「神迎神事」が行われる浜として知られ、出雲神話においても重要な役割を担ってきました。
国譲り神話の舞台のひとつとされ、神々がこの浜から上陸し、出雲の地へと進む──そんな物語が、今も人々の信仰の中に息づいています。浜の沖合には弁天島が浮かび、鳥居が海に向かって立つその姿は、ここが「神と人との境界」であることを静かに語りかけてくるようです。
波が寄せては返す穏やかな砂浜に立つと、次第に足音さえ遠のき、心の内側がゆっくりと静まっていきます。
この場所では、目に映る景色以上に、風の気配や波音の間(ま)、空の広がりといったものが、強く印象に残ります。稲佐の浜はまさに、私たちの中にある“祈りの原風景”をそっと呼び覚ましてくれるような場所でした。
小泉八雲と妻・セツもまた、出雲大社へ向かう前に、この浜を訪れたと伝えられています。
大きな社に誓いを捧げる前に、まず神々を迎える浜に立ち、海と空の広がりの中で心を整える──そんな静かな時間を、ふたりも過ごしていたのかもしれません。
海と空が溶け合うこの神聖な浜辺で、言葉にしない想いを胸に抱きながら、
やがて出雲大社へと向かう。
稲佐の浜は、八雲とセツにとっても、誓いを報告する前の“心を結ぶ場所”だったように思います。
稲佐の浜では、古くから「お清めの砂」を持ち帰る風習があります。
参拝者はこの浜で少量の砂をすくい、出雲大社の御本殿裏にある素鵞社(そがのやしろ)に納めることで、そこで“清められた砂”と交換し、自宅の敷地の四隅や玄関にまく「守り砂」として大切に持ち帰ります。
“神々が集う浜”の砂には、目に見えない力が宿っている——そう信じられてきたこの慣習は、今もなお多くの人に受け継がれていました。
実際、私が訪れた日にも、小さな袋を手にした方が、浜辺でそっと砂をすくっている光景を目にしました。
ただの観光地ではない、この地の神聖さを肌で感じさせてくれるものでした。
出雲大社──人と人、神と人とを結ぶ社
稲佐の浜からまっすぐ東へと足を進めると、やがて目の前に現れるのが「出雲大社(いずもおおやしろ)」です。
古代から“縁結びの神”として知られる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)が祀られており、男女の縁はもちろん、仕事、家族、人生のあらゆる“ご縁”を結ぶ神様として、全国から多くの人々が訪れます。
御本殿は国宝にも指定され、日本最古の神社建築様式「大社造(たいしゃづくり)」を今に伝えています。その高さは約24メートル。かつては今の倍以上の高さがあったとも言われ、古代人たちがいかに神を身近に、そして畏れ敬っていたかが伝わってきます。
大しめ縄がかかる拝殿で手を合わせると、言葉にできないような静かな力に包まれるのを感じます。ここでは、願いというよりも、感謝の気持ちをそっと伝えたくなるような、そんな場所です。
当時、御本殿の内部への参拝は神職や関係者など、ごく限られた者にしか許されていませんでした。外国人がその場に立ち入ることは極めて異例のことでしたが、八雲(ラフカディオ・ハーン)は「外国人として初めて御本殿への参拝を許された」人物と伝えられています。
その背景には、妻セツの存在が大きく関わっていたと考えられます。
セツは松江藩の武家・小泉家の出身であり、その家系は由緒ある家柄。実父の祖母は出雲大社を代々支えてきた千家家の一族・千家俊信の娘とされており、地域社会から厚い信頼を得ていた人物でした。
こうした縁が重なり、八雲は日本人以上に日本の精神文化を深く理解しようと努める“心のまなざし”をもって、特別な体験を許されたのでしょう。
そしてその体験が、彼の随筆や怪談、出雲にまつわる物語の中に、目には見えないものへの「敬い」や「祈り」の感覚として色濃く息づいているのです。
余談ですが、
「昼の出雲大社」「夜の日御碕神社」
出雲大社をあとにして、日本海沿いをさらに西へ向かうと、やがてたどり着くのが「日御碕(ひのみさき)神社」です。
この社は、太陽の神・天照大御神(あまてらすおおみかみ)と、須佐之男命(すさのおのみこと)をそれぞれ祀る「日沈宮(ひしずみのみや)」と「神の宮(かんのみや)」の二社からなり、鮮やかな朱塗りの社殿が海に面して建ち並んでいます。
実はこの日御碕神社、出雲大社と対になるような存在として古くから語られてきました。
「出雲大社が昼を守る神ならば、日御碕神社は夜を護る神」。
太陽が昇る東に出雲大社が、そして太陽が沈む西の果てに日御碕神社があるという、まるで“昼と夜のバトン”を渡し合うかのような、壮大な神話的構造がそこにあります。
出雲の神々は、日常の時間さえも、こうして丁寧に見守ってくれている──そんな感覚に包まれるのが、日御碕の地なのです。
八雲とセツがこの地を訪れたかはわかりませんが、古事記を読み、日本に強く惹かれた八雲であれば、出雲の“昼と夜を司るふたつの社”の物語に、きっと胸を打たれたのではないでしょうか。
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